ハンドメイド、アート、クラフト教室を運営している講師の悩みあるあるです。
生徒さんがため息まじりに「全然うまくならない…」なんて呟いたなら
あなたは先生としてどう対応しますか?
売れる教室を目指すなら、生徒さんをどう上達させればいいか?
は常に考えなければいけない「講師の仕事」のひとつです。
今回は「生徒さんが上達するために講師がやるべきこととは?」
についてお話しますね。
小さな教室の教科書
早川 ゆかり
生徒さんが上達しないのは誰のせい?
さて、生徒さんから「上達できない…」なんて呟きが聞こえたら、講師であるあなたはどう考え、どう対応しますか?
反省して講座内容を見直そう。と考えるのも大事なことですが
そのまえに知っておいてほしいことがあります。
それは
「生徒さんの上達の責任は、講師と生徒で対等にある」
ということ。
講師の腕と生徒さんの努力、両方ないと上達はムリです。
どんなに腕のいい講師だったとしても、生徒さんが努力してくれない限り、ものにしてもらうことはできません。
例えば、月1のレッスンに半年通ってくれてる生徒さんがいたとして、月1回、数時間のレッスンを受けただけで課題が克服できるか、といったらそんなのムリですよね。
そのまま翌月のレッスンまで一切練習しない人と、次までに何回も自主練した人とでは、半年後の成長は雲泥の差になるのは当たり前の話です。
自分で練習してくれない限り、講師にはどうしようもないところなのです。
繰り返し練習することが大事だということは生徒さん自身も分かってはいるんですよね。
けれど、ひとりではなかなか行動を起こせない、というのが実際によくある話です。
けれど、生徒さんがついてこれないからといって、毎回講座で同じコトを繰り返していては
カリキュラムを進めることができなくなってしまいます。
ひとは成長したい生き物です。
新しいことを常に学び成長したいと思っています。
復習は大事ですがステップアップを感じない講座になると魅力がなくなってしまい、「やりたい!」というひとが誰も来なくなってしまいます。
それでは元も子もないので、カリキュラムはやはりステップアップするよう魅力的に組まなければいけません。
そうすると、講座は回を追うごとにステップアップしているのに、練習不足から生徒さんの技術が追い付かず
結果、冒頭の呟きが漏れてくる…ということになります。
この状態では、どんなに講座を改善しても生徒さんが練習してくれない限り同じコトの繰り返しになる。
ということが起こってくるので、闇雲に講座を改善するまえに
「いかに生徒さんに動いてもらうか」を考えることが重要になります。
講師の仕事は「ひとを育てる」こと
育てるというのは、「自分で考え、動けるようになってもらう」ということです。
そのためには、ここはダメ、こうするといい。といった型どおりの「やり方」だけを伝えるのではなく
「なぜダメなのか」
「なぜこうするといいのか」
「そうすることで何が避けられ、何がどう変わるのか」
「他に選択肢はどんなものがあるのか」
特にアートやデザイン、モノづくり系の講座であればひとつの型に押し込めないよう
相手を理解し、納得できるよう関わっていく必要があります。
「言ってることは分かる。けどできない」といった、理解はできても納得できていない状態では自分でやろうという気にはなりません。
必要性を理解してもらい、選択肢をひろげ、妥協案を一緒に見つけることでやっと腹落ちし
「できそう」「やってみよう」という気になってくれます。
最初から理想を押し付けるのではなく、そのひとが動きやすいよう自主練の時間や課題のハードルを簡単なものにし
講座の中で、練習することの大切さを常に伝え続け、自主的に動けるよう働きかける。
そこまでが講師の仕事です。
自主的に練習してもらうために
では自主的に動いてもらうために講師はどう働きかけていけばいいのか?
簡単なのは「言葉がけ」です。
「言わなくてもそれくらい分かっているだろう」
という考えは、まず捨ててください。
ひとは楽をとりたがるものなので、意識せずとも面倒なことは避けています。
本能とまではいいませんが誰にでもある無意識レベルの話なので、これを責めることはできません。
なのでいちいち言うことが大事なんです。
レッスン始めの「練習できましたか?」レッスン終わりの「練習しましょうね」
その一言を毎回言うだけでも生徒さんの意識は変わります。
練習しないことが普通ではなく、練習することが普通なんだ、と捉えている常識を変えていけるように
前向きな負荷をかけていきましょう。
毎回声かけをしているのにそれでも練習できない。
という人には選択肢と妥協案を一緒に考えます。
そうした「関わり」をしていくことで、生徒さんとの信頼関係もしっかりとできていきますよ。
もしも、「そんなところまで面倒見切れない」と思うのであれば、最初から本気で取り組めるひとだけを集めるよう告知の仕方から変えていく必要があります。
自分の教室の方針を明確にし、想い違いをしたひとまで集めてしまわないように気をつけましょう。
お互いに「こんなはずじゃなかった…」という悲しい後悔が起こらないよう
自分の教室に合った生徒さんがどんな人なのか
その理想的な生徒さんに来てもらうにはどうすればいいのか
最初の教室の軸作りで明確にしておくことが大事ですね。
「努力」をひとつの物差しで測らない
練習の量はひとそれぞれ、どこを目指しているのかもひとそれぞれです。
そして、ひとりひとり違った基準を持っているということを知っておきましょう。
例えば5時間練習したとしてその5時間がものすごい時間なのか、たった5時間なのか、その捉え方はその人の「背景」によって違ってきます。
背景とはその人それぞれの「定義」といったものです。
フルでお仕事をしている方や、小さなお子様を育てている方など、自分の時間を思うように捻出できない方の5時間と
子供も巣立ち、自由に使える時間がある方の5時間の意味は違ってきますし、
何が何でも技術をものにして自分の仕事に活かしたい!と思っている人と
趣味で楽しみたいと思っている人も、その5時間の意味は違うはずです。
相手の背景を理解しないまま、ただ練習するのみ!と講師だけが熱くなっていても誰もが同じように取り組めるわけではないということです。
練習したくてもできないのか、練習したくないからしないのか、練習の仕方が分からないからしないのか、しなくていいと思っているのか
その人の人生、生活の中でそれがどれだけの重要性があるのか、で時間の使い方は変わってきます。
教室に継続して通っていただく間にそういった相手の背景を知り、その方に合った働きかけをしていきましょう。
気を付けたいのは、それぞれの目的が違うひとが集まっている教室では、ひとつの物差しで測らないよう心掛けること。
「レベルアップ講座」や「集中講座」、
「○○を楽しむ教室」といったように講座名やキャッチコピーを工夫すると、来る人もどんな講座なのか分かりやすく、選びやすいですね。
クラスの熱量を揃えるように工夫できることはいろいろあるので、最初からそういった仕組みを作っておくと関わり方が楽になりますね。
生徒さんの視点を変える
練習してるのに上手くならない、と呟いてしまっている生徒さん自身の
「視点を変える」ことも大事です。
ひとは常に何かと比較して自分の位置を決定しています。
「上手くならない」とは誰と、何を、どう比較してそう言っているのか。
これは生徒さん本人も無意識に比較してしまっているので、わざわざ聞く必要はありません。
聞くよりも、他所を見ている視点を自分自身に戻すことが大事です。
誰でも必ず、スタートした時と比べれば成長しているはずです。
それはやってきた努力の賜物でもあるはずです。
ひとは足りてないもの、欠けてしまっているところに注目します。
生徒さんから「先生、どこを直せばいいか教えてください」といったことを聞かれた経験はありませんか?
きっと「あるある!」と皆さん答えてくれたのではないでしょうか。
私たちが経験しているとおり人は良くできてるところに着目するより、足りてないところにばかり着目し、聞きたがるんです。
ですが、できていないことばかり、足りないものばかり見ていると、「やっぱり私は出来てないんだ」という自信を持てない裏付けばかりとってしまい、結果どんどんやる気は下がってしまいます。
自分に自信や未来への期待を持ってもらわない限り、自分から動いてもらうことは出来ません。
そこで大事なのが、「他人ではなく、過去の自分と比較する」という生徒さんの視点を変える働きかけです。
他人と比較するのではなく自分がどうやってここまで進んできたか
どんな努力をしてきたか、ということを生徒さん自身に振り返ってもらい
こんなことができるようになった。
説明がなくてもここまで自分でできるんだ。
と、過去にできなかったことが出来ている。という一歩一歩確実に進んでいるという「事実」を再認識してもらうよう度々こちらから働きかけることが大事です。
ときには「ほんとに上手くなったよね」と「感想」を言ってあげましょう。
本人は「上手くなってない」と主張したとしても「私はそう思っている」という、人が感じた感想自体はその人にとっての事実なので、否定しようがないものとして認めていけるんですね。
そういった言葉がけをすることで「そうなのかな」「上手くなってきてるのかな」と少しずつ自信に変わっていきます。
もちろん、ただのお世辞になってしまわないよう、「なぜ上手くなったと思うのか」の根拠も一緒に伝えていくことを忘れないようにしてくださいね。
お世辞を言っている。と思われてしまったら、これまでに築いてきた信頼関係は壊れてしまいます。
嘘は言わないこと。理由もなく褒める、ということはしないように気を付けてくださいね。
褒め方でやる気をそいでしまわないために
生徒さんのなかにはとんとん拍子に上手くなるひともいます。
才能と言ってしまえばそれまでなのですが、
特にめちゃくちゃ練習をしたというわけでもないのに出来てしまう、という人もたまにいますよね。
練習してるのになかなか上手く出来ない、という人が同じクラスにいる場合、
褒め方にも気を付けなければ、やる気をなくさせてしまうことになるかもしれません。
上手くできたかどうかだけで褒めてしまうと、上手くできてない人がなかなか褒められない、ということになってしまいます。
人と比べないように、と生徒さんの視点を変えても、いつもあの人ばかり褒められる。
という出来事が目の前で何度も起こると、やはり比較の視点に戻ってしまいます。
下手をすると「先生は贔屓をしている」と思われてしまうかも知れません。
そんな誤解を生まないためにも「結果」ではなく「過程」にフォーカスする。
ということを意識するようにしましょう。
「過程」にフォーカスするというのは、上手いかどうかといった「結果」を褒めるのではなく、取り組んだこと、考えたこと、工夫したこと、努力したこと、そういった「過程」を褒めるということです。
そうすると、上手いひともそうでないひとも平等に見ることができます。
努力を認めてもらえることは誰だって嬉しいものです。
生徒さんが落ち込んでいる時はそういった自分がしてきた過程を自分でも見れなくなっているので、講師から声かけしてあげると前向きな気持ちになってくれるので、ぜひ取り組んでみてください。
生徒さんのやる気を奪ってしまわないよう、褒め方にも気を付けていきたいところですね。
さいごに
生徒さんが成長するには、講師側の努力と生徒側の努力、この両方がないとできません。
それを生徒さんとも共有して「一緒に頑張っていきましょう。」と最初の挨拶の時からお話して生徒さんの意識に働きかけていくことが大切です。
講師の仕事は生徒のやる気を引き出し、自ら動けるように働きかけること。
それが成長を早める一番の近道になり、生徒さんとの信頼関係も築けていきます。
講座だけをどんなに見直しても、結局は生徒さんのやる気にかかってくるので、講師は生徒さんの気持ちや背景を理解できるよう努力していきたいですね。
小さな教室の教科書
早川 ゆかり